7)合唱(エオリアン編)

 大学卒業後9か月間は合唱はやらなかった。職場が遠すぎて、体がついていけないと
感じていたせいである。しかし、友人からエオリアン・コールの演奏会に呼ばれて聴きに行ったら、
やっぱり歌いたくてたまらなくなった。このエオリアン・コールは、S先生に惚れ込んだ人々が
飲み屋で盛り上がった勢いで作った合唱団で、ソレイユの先輩なども大勢入っていた。
実は、この合唱団ができた時、私はまだ学生で、福武書店で進研ゼミの教材作り(校正)の
アルバイトをしていたのだが、この時たまたま隣の席にいた社員が、エオリアンを作った
仲間の一人だった。バイト中に「新しい合唱団」の話を聞かされ、入らないかと誘われたが、
当時はそんな余裕もなかったので、「卒業したら」と答えておいた。その後、大学最後の年に、
人数が足りないからと言われてお手伝いで演奏会で歌ったことがあった。楽しいメンバーで、
居心地がよさそうだなと思った。そんなこともあって、思い立ったらすぐ入団した。 
入団当時、アルトには六本木の交差点の近くに住んでいるメンバーがいて、パート練習は
彼女の家でやっていた。練習の後はそのままそこで飲み会である。
飲み会とセットになっていたせいか、アルトは他のパートより頻繁にパート練習をしていた気がする。

 今では皆忙しくなり、パート練習はあまりできなくなってしまった。
全体練習も平日の夜は休む人が多く、ちょっと寂しい。
それでも、練習の後に飲みに行くことは結構多い。

 私は法廷通訳を始めた頃からとても忙しくなり、だんだん練習に出られなくなってしまった。
半年以上出なかったこともある。本番前に3回ぐらい出て、後は自分で練習して、
なんとか間に合わせて舞台に乗る、という状態がずっと続いてきた。でも、
合唱は最初に皆で音を合わせた瞬間と、演奏会直前、曲として仕上がった頃とが
一番面白い。演奏会は結果であって、目的ではないと思っている。
もちろん、ステージに乗るのは好きだが、ステージに乗るためだけに練習するのは
本末転倒だと思うので、もっと練習に出たいなあといつも思う。が、こうも仕事が忙しくては、
それはかなわぬ夢だろうか。

                        

8)カラオケ

 さて、話は変わって。これだけ歌が好きな私だが、実はカラオケはあまり好きではない。
一緒に行く仲間にもよるのだが。理由はいろいろある。
まず、カラオケは「えせコミュニケーション」である、ということ。
接待のお酒や接待ゴルフと近いところがあって、「仲良くなった気分になる」だけ、
というのがなんとなく嫌なのだ。物理的に一緒の空間にいるだけで、
その実、他の人の歌は聴いておらず、自分が次に歌う曲を一心不乱に探していたりする人が多い。
それと、下手に他の人と話をしようものなら、歌う以上にノドをやられてしまう。うるさすぎるのである。
さらに、「今日は歌いたくないので、皆さんの歌を聴いています」と最初に断っていても、
「歌ってないのはあんただけだ。さあ、歌え歌え」としつこく言ってくる人がいる。
この場合の「歌う」は、「マイクを握って、自分一人で、あるいは自分が中心になって歌う」という意味で、
皆と一緒にくちずさんでいるというのは歌ったうちに入らない。その上、じゃあこれを歌います、
と選曲すると、それにけちをつける奴がいる。バリバリの新曲か、逆にうんと古い曲なら
文句は言われないのだが、自分がいくら好きな曲でも、2〜3年前にヒットした曲なんか選ぼうものなら、
「何古い曲歌ってるの〜」と言われてしまう。まあ、家族と行くぶんには、こういう問題はないし、
エオリアンにはとんでもない曲を歌いまくる奴が一人いるおかげで、
選曲でつまらない悩み方をすることもない。とはいっても、カラオケで歌ってノドをやられてしまうと、
教師としても通訳としても仕事に支障をきたす。昔、裁判官や書記官と一緒にカラオケに行って、
最初は「病み上がりだから」と歌わなかったのに、盛り上がってきてついマイクを持ったため、
それから数日間声が出なくて困ったことがあった。演奏会の後によくカラオケに行くが、
皆よくまだ声が出るものだなあと感心したりうらやましく思ったりしながら、
自分ではあまり歌わないようにしている。でもたまには思い切り歌ってみたいな、
と思わないでもない。レパートリーが少ないので、そのへんもなんとかしなければいけないのだけれど。