(14)おばけ 1999年12月
妹がしょっちゅううちに遊びに来るのだが、甥っ子たちが小さいので、私の部屋は内緒にしていた。
入られて重要書類に何かされても困るし、本の山が崩れてきても危ない。
そんなわけで、甥っ子たちの前では決して部屋を出入りしないように気をつけていた。
出かける予定なのにドアの近くに甥っ子たちがいる気配がするときは、
わざわざPHSから母に電話をかけて、遠ざけてもらっていたりした。
ところが、ある日、ついに見つかってしまった。ちょうどドアを出たところで、
隣の部屋から出てきた下の子と鉢合わせしてしまったのだ。
甥っ子は凍りついたように一瞬動きを止め、それからごろんと後ろにひっくり返った。
翌日、彼はこう言ったそうだ。
「あのね。ろうかのおくのどあ。あのむこうにはおばけがいるんだとぼくおもってたの。
だからこわいからあけたことなかったの。そしたら、おばけのへやではなくて、
ちえみおばちゃんのへやだったの」。
道理で、鉢合わせをしたとき、凍りついていたわけだ。
翌日会ったとき、彼の顔に「ちょっぴり恐怖」と書いてあったわけもわかった。
しかし、うちの家族は「おばけもちえみおばちゃんも似たようなものじゃない」
とわけのわからんことを言っている。なんだそりゃ。
(15)中西家流選挙の楽しみ方
我が家での選挙の楽しみ方はこうだ。まず、テレビでの政見放送などを適宜見ながら、
選挙公報が来るのを待つ。来たら、弟と私がまずざっと目を通して、
「こいつはダメ」という候補に×をつける。ハコものばかりに目が行ってる奴は、ダメ。
ライバルをけなす抽象論ばかりで具体策がひとつも書いてない奴も、ダメ。
読みにくいのも、ダメ。政治家は政策を伝えて相手を説得してなんぼ、だからだ。
政党で統一したものを出していて、違うのは候補者の名前だけ、というのも、ダメ。
個人に投票する意味がないし、その人の考え方がわからないからだ。
候補者がだいぶ減ったところで、しばらく様子を見る。そうすると、選挙カーがやってくる。
選挙カーがうるさい奴、時間を考えずに来たり、名前を連呼するだけの奴には、これまた×をつける。
電話で投票を頼んでくる奴も、ダメ。それでも本人がかけてくるのなら、
政策のひとつも聞けるというものだが、事務所の女の子が「お願いします」と言うだけなんて、
時間とお金の無駄である。しかも、電話というツールは、相手の時間を突然奪うわけだから、
そんなことを平気でやる奴には、入れない。
以前一度、私がひそかに「この人に入れてもいいな」と思っていた候補者の事務所から
かかってきたことがあった。
「残念でしたね。私は事務所が電話かけてくる候補者には入れない主義なんです」と言って切った。
本当に残念だったが、そのときは別の人に入れた。
さて、こうやって、候補者がかなり少なくなったところで、各自、じっくりと政見を読んだりして、
自分が投票する人を決める。弟と私は誰に入れたかは言わないが、
最後に「AさんとBさん、どっちにしよう」と迷っている時点ではこの2人の最終候補が
一致している場合が多いようだ。母は「決めたっと。Cさんにするわ」と堂々と宣言する。
父はよくわからないが、まあ、似たりよったりの人に入れてる気がする。
投票は朝早く行くことが多い。「一番乗りしよう」と言って皆で早起きしたこともあったが、
途中で母が投票ハガキ(当時は1人1枚だった)を落として、探しに戻ったりしているうちに遅くなった。
投票に行く途中、父は必ず、一番とんでもない候補の名前をあげて、
「Dさんに入れればいいんだろ」と言って、家族のひんしゅくを買う。
もちろん、冗談なのだが。そして、投票所に入るとき、父はこれまた必ず、
「誰に入れるか忘れちゃった」と叫ぶ。で、母に「忘れたならCさんに入れなさい」と言われる。
投票所を出ると、父は「Dさんに入れたよ、えへへ」と言う。
だが、その後の会話でそれが冗談なのはバレバレである。
そんなわけで、母以外は誰に入れたかあまりちゃんと言わないことが多いが、
テレビで誰が当選したか見て騒いでいるうちに、だいたい誰が誰に入れたかは見当がつく。
以上が中西家流「選挙の楽しみ方」である。