〜家族のいる風景2〜

(6)お母様はおいくつですか

母は昔から「私は28歳」と言いつづけてきた。20年以上28歳をやってた気がする。
昨年の誕生日、やっと「29歳になったの」と言い出したが、
今年の誕生日に「いくつになったの」と聞いたら、やっぱり29歳だという。

一方、弟はひとの年齢や誕生日を覚えるのが苦手だ。
しょっちゅう私のところへ「パパの誕生日っていつだっけ」
「ママは今何歳だっけ」と聞きにくる。

そんな弟が就職活動をしたときの話。ある大手の会社でトントン拍子に話が進み、
役員面接までいった。面接も終わりに近づいた頃、ある役員が言った。
「ところで、お母様はおいくつですか」。弟は一瞬凍りついた。思い出せないのだ。
だけど、ここで「知らない」なんて言ったら、面接はぱあである。
母親の誕生日も知らないようでは絶対まずい、と思った弟は、何食わぬ顔をして言った。
「母はいつも自分では28歳だと言っております」。
役員たちはおなかをかかえて笑い転げ、弟は無事その会社に就職した。

(7)語録 2000年11月23日(木)

家族4人ででかけようとしてたら、誰かが誰かを待っている間に何かし始めて、
それが終わらないので、またそれを相手が待って...みたいな悪循環にはまってしまった。
「何やってるのよ」の母の言葉に、父が一言。「待ちつ待たれつ」。

 出かけた先で、ピザを食べた。やっぱり焼きたてのはおいしい。
 で、弟が一言。「昔から『ピザは熱いうちに食え』って言うもんね」。

(8)算数

弟は算数が不得意だ。あるとき、母と妹と私の3人がきびだんごを食べていたら、
弟が部屋に入ってきた。12個減ったきびだんごの箱を見て、弟は叫んだ。
「あっ!ずるい、僕にナイショで。しかも、一人3個も食べて、ひどいひどい」。

★★★★

両親がメキシコにいるとき、電話をするのに時差が計算できない弟は、
24時間すべての時刻を1時間刻みで並べ、それに対応するメキシコ時間を隣に書いた紙を、
電話台の扉の裏側に貼っていた。
私が初めてメキシコへ行くとき、エージェントから飛行機の出発と到着の時刻を書いた紙は
もらったものの、時差があるから、全部で何時間かかるのか、よくわからなかった。おまけに、
出発直前まで猛烈に忙しくて、こんな簡単な計算すらしている暇がない。
仕方がないので、弟に頼んだ。「メキシコまでは、えっと、8時間だよ」
と電話台の扉の裏を見ながら弟は言った。ふうん、メキシコって案外近いんだなって私は思った。
ところが成田を出発して8時間たっても、飛行機はメキシコどころか、アメリカにもまだ到達してなかった。
「さては、計算間違えたな」。結局、15時間かかった。どこをどう間違えたら8時間になるんだ。
信じた私もまぬけだったが。