〜家族のいる風景〜

   (1)DVD顛末記 (2000年暮れ)

     ある日、私達家族は4人そろって、新しくできたサティを「見物」しに行った。
     母と私、父と弟がそれぞれ一緒に見たいものがあったので、二手に分かれた。
     しばらくして合流してみると、父が手に何か持っている。
     「止めたんだけどきかなかったんだよ」と弟がぼやく。
     それは沖縄を舞台にした映画のDVDソフトであった。
     最近沖縄にハマっている父は、以前観たその映画がどうしてもまた観たくなって、
     買ってしまったらしい。


     「え〜っ、うちにはDVDを観る機械はないのに」と皆が言うと、
     父は「じゃ、買おう」と一言。その日のうちに、
     DVDプレイヤーを買ってしまった。1万6千円くらいしたかと思う。

     さて、プレイヤーを買ったはいいが、それをどこにつなぐのかという話になった。
     実は我が家はテレビが6台もある。私のポータブルテレビも入れれば7台だ。
     父の部屋に置けばいいじゃないかと私は最初思ったが、
     地震対策を考えると望ましくないと弟が反対した。
     父は「リビングのテレビにつなごう」と言った。


       しかし、リビングのテレビ(これは弟の所有物だがたいてい父が見ている)
     は型が古く、DVDはつなげないとわかった。父が言った。
     「うん、じゃあ、新しいテレビを買おう」。
     数日後、私以外の家族はまた出かけていき、新しいテレビを買った。
     今までのと比べて格段に大きい。値段も、7万ちょっとしたらしい。
     大変な買い物である。どこにそんなお金があったのだろうか。

       さて、テレビを買ったはいいが、今までのより格段に大きいため、
     同じテレビ台には置けない。父が言った。
     「仕方がない、テレビ台を買おう」。
     私が一人家にこもって仕事をしている間に家族はまた出かけていき、
     テレビ台の品定めをした。帰ってきた家族はなにやら大騒ぎしている。
     何だろうと思ったら、父が立派なテレビ台を見つけ、
     それを買うことにしたのだが、そうなると、隣の古い本棚がいかにもみすぼらしい。
     で、ついでに本棚も買いかえることにしたというのだ。
     テレビ台と本棚が合わせて55万円ちょっと。私はくらくらしてきた。

       母が言った。「テレビ台や本棚が新しくなったら、
     壁紙が汚れてはがれかけてるのが目立つわ。貼り替えようかしら」。
     父が言った。「そこの壁だけってのはまずいんじゃないのかな。
     どうせなら部屋全体の壁紙を一気に貼り替えないと」。
     弟が言った。「ねえ、いっそのこと、家買いかえない?」

     うちはそんな金持ちじゃないぞ。
     来年は父にはうんと稼いでもらわないといけないと思う今日この頃であった。