チリでびっくり(1)
小学校3年の初めから中学校3年の11月まで、チリの現地校に通いました。
日本とはだいぶ違うところがいろいろあって、最初はびっくりの連続でした。
◆遠足は自由に
チリの学校では、遠足とか各種行事はすべて生徒が自主的に企画・決定してました。
つまり、日本のように、年間行事が最初から決まっているというのではないのです。
「遠足に行きた〜い」ということになれば、行く。 「ダンスパーティーをやろうよ」ということになれば、やる。
もちろん、独立記念日とか「○○週間」の行事のように、学校側が決めるものもありましたが、
中身は大部分、生徒が自由に企画してました。
遠足の場合は、バスをチャーターして全学年で行くというものもある一方、
あるクラスだけが行くなんてこともありました。 今はだいぶ変わったのではないかしら、と思ったのですが、
去年母校で聞いたら、逆に「えっ!日本では自分達で企画できないの?
そんなのつまらない!!なぜ?どうして?」と言われてしまいました。
◆ギター持ってバーベキュー遠足
小学校で遠足に行くことになり、父兄もついて行くことになりました。
張り切ったお父さんたちはギターとバーベキューセットを持って行きました。
山の上でギターに合わせて皆で歌ったり踊ったり。バーベキューも豪勢にやりました。
◆泳げない先生
チリの教育カリキュラムには、どうやら水泳というのは入っていないようです。
小学校の遠足で大きな農家へ行ったら、庭にプールがありました。
皆でぱちゃぱちゃやっていて、ふと担任の先生を見ると、浮き袋の中から顔を出して浮かんでいるではないですか。
まったく泳げないというのです。その後も、その学校で水泳は教わりませんでした。
転校した先で少しだけプールの授業がありましたが、何も体系立てては教わらず、
生徒は各自ただ適当にぱちゃぱちゃ泳いでいるだけでした。
◆PTAは楽しく
当時のチリのPTA会合というのは、単なるパーティーのようなもの。
「うちの子の成績」や「イジメ」なんかの話はまったく出ず、
「そうだ、今度バーベキューをしよう」とある父親が言い出し、
次の会合では子供も一緒に校庭で大バーベキュー大会となりました。歌って踊って楽しい催しでした。
◆連絡帳は自分で
新学期に必ず買うもののひとつが連絡帳。といっても、ただのメモ帳なのですが。
連絡帳に書くものは、低学年なら先生が黒板に書いて子供たちがそれを写して帰ります。
高学年になると、先生が口で言った文を子供たちが聞いて書き取ります。
今のように簡単にコピーがとれる時代ではなかったせいもありますが、「プリント」もなく、
先生は子供たちが書き取った文の最後にサインをして回るだけ。
フォーマルな手紙の定型句はこれでばっちり覚えました。
◆起立!でも礼はしない
教室に先生が入ってくると皆さっと立ち上がります。
最初にいたミッションスクールでは、「○○先生、おはようございます」と声をそろえて挨拶していました。
ただ、日本の学校のように、「起立!」とかけ声をかけることはしません。
また、頭を下げることもしないので、最初はちょっととまどいました。
◆当たるが勝ち
先生が質問をすると皆「はい!はい!」と手をあげます。
でも、日本のように手の平を広げて手をまっすぐあげるのではなく、
何かを指さすように人さし指を突き出した形で上にあげます。
女の先生のことをチリでは MISS と言っていましたが、手をあげるときはこの言葉を叫びます。
高学年になっても皆、どうしても当ててほしくて大騒ぎするところが、ちょっと日本とは違うかもしれません。
目立ったもの勝ちなので、机の上に立ち上がって手をあげる子もいて大変でした。
◆夏休みは3か月、しかも宿題はなし!
チリの学校は3月10日ごろ始まります。季節は夏の終わりです。
8月に冬休みがちょっとあって、その後が2学期です。
12月のクリスマスより少し前に学校は夏休みに入ります。
夏休みの間に進級するので、宿題はありません。3か月まるまる遊べるのですが、
私はその間に日本の教科書で勉強していたので、友人たちほどには遊んでないと思います。
◆テストの点数は7点満点
チリでは点数がなぜか7点満点でした。普段の小テストも学期末の試験も同じです。
点数には小数点以下1桁までつきます。つまり、「6.4」とか「5.8」とかになるのです。
一年の総合成績は小テストやレポート、期末試験などの点数を平均したものがそのままつきます。
4以上取れないと落第です。ある科目だけ成績が悪い場合は補講をして許してもらえたりしますが、
そうでない場合は落第で、同じ学年をやり直さないといけません。
学校によっては落第すると追い出されてしまうので、市内で何度も転校するのはめずらしいことではありませんでした。
◆飛び級する子も
逆に、ずば抜けて成績がいい子だと、飛び級もありえます。
チリでは日本のように必ず6歳で入学するわけではないので、
もともと1年早い、あるいは遅い子供が何人かいたりします。
だから、落第したり飛び級したりする子がいても、お互いあまり気にならないのです。
もともと日本人のように年齢が上だとか下だとかを気にしない国民ですからなおさらです。
◆8+4=12年
チリは小学校が8年生まであります。中学校が4年。
これでちょうど日本の高校を出たのと同じ年齢になるわけです。
小学校と中学校、というより、小学部と中高部という方が近いでしょうか。
私立だと12年間同じ学校にいるので、その間、卒業式も入学試験も何もありません。
卒業証書も証明書も出ません。そんなわけで私は小学校を卒業していない(!)ので、履歴書を書くときに苦労します。
日本では履歴書は「○○小学校卒業」から書き始めるのが常識とされているものですから...。
日本と違って、私立の学校が普通、というチリ。
貧しい家庭の子供は公立の学校へ行きますが、こちらは義務教育との関係で8年間の小学校だけです。
ただ、最近、公立の中学校も作ろうという動きがあるというニュースも聞いています。
◆テストの返し方
私がチリで最後の4年間通った学校は、普通の家を改造しただけの小さな学校でした。
教室も元ベッドルームだったり居間だったりガレージだったりしました。
そんなわけで、狭いものですから、いったん席に座ると、なかなか通路に出ることができません。
テストを返すとき、先生は名前と点数を読み上げながら一番前の席の子に渡していきます。
生徒達は順に後ろへテスト用紙を送っていき、自分のがきたらそれを確保します。
つまり、クラスメートに点数を隠すことは不可能なのです。
というよりも、隠そうという気持ちすら、先生も生徒も持っていないのです。
日本に帰ったら、皆テストを返されると大慌てで点数の書いてあるところ(たいてい紙の右上)を三角に折って、
点数が見えないようにするので、私にとっては大変な逆カルチャーショックでした。
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